序章

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落ちてくるような鈍く輝く一筋の白線を避ける。 後ろに下がったところへ次の斬撃が飛んできた。 眼前に迫る刃をかろうじてかわすが、相手の刀の方が速かった。 かわしきれず、顔面から血が吹き出す。右目をやられたらしく、視界が奪われ、激痛が走る。 致命傷とまではいかないが、勝算と視界を同時に失った。 とはいえ、命のやりとりだ。 片目でも勝たなくてはならない。 距離を取りつつ、覚悟を決めて構えた。 しかし、構えた先には殺すべき相手の姿がなく、辺りを見渡す動きも出来ぬまま、両腕が刀と共に宙を舞った。 「うぐぁあああああぁぁぁ!!」 痛みと喪失感で恐怖の叫びを上げる。 一瞬だった。 叫ぶ前なのか、途中なのか分からないが、俺は後ろに倒れていた。 胸に刃を突き刺されて。 すでに限界に達したのか、激痛は感じられず、熱いのか、苦しいのか、自分の身体が他人のもののようにも感じられるし、独特の感覚だ。 ただ一つ分かることは、俺は死ぬということだけだった。 左目だけで青空に浮かぶ雲を追う。 どこかで獣の鳴き声が聞こえた気がした。 「また俺の勝ちだな、おまえさん」 肩までかかるさらさらとした長い黒髪が風になびき、大きな二重まぶたの眼が血だらけの自分を映す。 凛々しい少年といった風貌の竜翔(りゅうしょう)が忌々しくも勝ち誇っていた。 「ちくしょう」 温かいものが瞳から溢れ出る。 もはやそれが涙なのか血なのか、知ることはない。 「じゃあな、おまえさん」 リュウはゆっくりと刀を振り下ろす。 骨を断つ不快な音と共に、首のない自分の身体を視界に捉え、数秒後には意識は漆黒の闇の彼方に旅立った。
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