序章

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その話を聞いて、見たこともない京の都を何度も思い浮かべる。 ヒコジは一度だけ、皇龍大将軍を遠くから見ることができたらしい。 アジャン大陸には17人の将軍と5人の大将軍がおり、帝(ミカド)と民(タミ)をお護りして下さっている。 大将軍は、青龍大将軍、白虎大将軍、朱雀大将軍、玄武大将軍の四聖大将軍と皇龍大将軍の5人で、22の将軍家から選ばれる。 当代の大将軍がご逝去されたり、ご隠居なされたりした時、あるいは帝が一代一回限り、総解散をできるそうだが、それらの時に次の大将軍をお選びなる。 詳しいことは分からないし、どうやったら将軍になれるのかも分からない。 そんな雲の上の存在である皇龍大将軍を見れたことは一生の誇りだとヒコジは自慢する。 四聖大将軍は見れなかったのは残念だと嘆く一方で、京の都を守る皇龍鎮撫隊の隊士と酒を酌み交わしたと楽しそうに話した。 なんでも、皇龍鎮撫隊とは、皇龍大将軍に認められた浪士の集まりで、京の都12区の守護を目的とする集団らしい。 鎮撫隊の隊士全員が黒と白のダンダラ羽織を着て、都を歩き回る姿は迫力があり、また、捕物中の隊士は皆驚くほどに強かったと自分のことのように自慢気に話すヒコジが羨ましかった。 成人の儀の土産話は、京の都だけではなかったが、興味を惹かれたのは話ばかりではなかった。
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