序章

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ヒコジは成人の儀を終えた後、祝言を挙げたのだった。 しかも、相手は村一番の美女だ。 どうやったのか、村の皆が不思議がったが、なんのことはない、貢ぎ物で関心をかったのだ。 京の都には葉麻村では手に入らないようなものでも、簡単に手に入る。 成人の儀の途中、ヒコジは腕を活かして魚を釣り上げ、それらを売り捌くことで路銀にしていたらしく、稼いだ銭のほとんどを土産に費やした。 また、異国の品々も市に出回るようで、反物や櫛なんかに加えて、ギヤマン彫りの湯呑みや枯れない花、ぺんらいとなる、暗闇を照らす機械を買い漁った。 それらを貢いで求婚したそうだ。 決め手になったのは、異国の風習でもある、えんげーじりんぐという指にはめる宝石だと、こっそり教えてくれた。 正直、助平とか破廉恥とかって思ったし、何しに行ったんだこいつはとも思った。 それでも、京の都で手に入れた品々は土産話以上にわくわくした。 俺も来年は京の都に行くんだ。 そして、ヒコジのようにならず、たくさんの長老役から認可を貰って偉くなるんだ。 そう誓った。
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