失望と始まり

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週末の朝、明るい日差しが私のまぶたにじくじくと刺さってきた。枕元に置いてある時計を見てみると時刻はすでに10時をまわっていた。しばらくお布団の中で伸びたり、縮んだり蠢いていたが今日は本屋に行くのだということを思い出し、冬眠から目覚めたクマのようにのそのそと這い出た。適当にトーストを焼いて朝食とし、着替えるとすでに日が高くなりつつある青空の下へと出て行った。 休日の午前の空気はまだ微かにヒンヤリとしていて、アパートの前の坂を自転車で一気に下るとほっぺたが紅潮するのが自分でも分かった。春の息吹は感じられるが、それでもまだひっそりとしている。今、私が住んでいるのが北日本だということもあり春というよりも冬の終わりと表現した方が適切だろう。しかしながら、私はこの冷たさは、嫌いではない。寒すぎるのは嫌だが。 自転車を漕いで20分くらいで街の中心部に着いた。地方の中心都市となっているだけあって多くの店があり人々で混雑していた。私は本屋を探すことから始めた。読者諸君にどうでもいい情報をひとつ提供するが、私は地図を見ない主義である。紙媒体のものもそうだし、スマホの地図アプリも見ない。無心でぶらぶらして、ふと目に入った店を訪ね一期一会を楽しむのが最高に粋だと考えて調子こいていた私は案の定、道に迷った。
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