青春、始動!!

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「…というようなことを、数十年たった今でも思い出します。 ですから、本校に入学した皆さんには、充実した中学校生活を 過ごしてほしいと思うわけです。そのためには、 昔から言われている文武両道の精神を大切にして…」 四月ー。 桜の花が咲き誇る中、全国で数多くの人間が、新たなスタートを迎える。 新卒入社のサラリーマン。 厳しいプロの世界に飛び込んでいくスポーツ選手。 そして、新たな学びのステージに立つ学生諸君。 ここ、福島県岩見市立堂田中学校でもまた、この春 125名の新入生が入学した。 さほど大きな学校ではないが、学区内にある4つの小学校から 生徒が集まってくるため、入学して最初の課題は友達づくり。 いわゆる「中学デビュー」である。 あたりさわりのない会話から、次第に踏み込んだ会話へ。 相手との距離感を測りながら、価値観を推し量る。 「あれー?竣ちゃんて左利きなんだー!!」 「ん?あ、あぁ、まぁね。…って言っても、食べる時だけで、 あとはほとんど右なんだけど。」 給食を食べている時だった。 同じクラスの宗像麗美は、誰にでもよく話しかける。 その弾けるような明るい笑顔と、類稀なるルックスで、 すぐにクラスの人気者になった。 既に、男子上級生も入り乱れての争奪戦が、 水面下で始まっているらしい。 それに引き替え、中学デビューに完全に乗り遅れたこの男。 流川竣介。 小学校時代から話ベタなわけではない。 むしろ、話すのは好きだし、二枚目より 自分は三枚目よりであると自覚している。 しかし、竣介には致命的な弱点があった。 極度の人見知りなのである。 相手が美人であれば尚更のこと。 したがって、クラス一、下手をすれば学年一の美少女に 話しかけられ、心の中では万歳三唱しているにも関わらず、 挙動不審な受け答えしかできないのだ。 人に慣れるころには、この美少女は誰かのものになり、 その他の女子達も、めぼしい所から売約済みになっている ことだろう。 入学してわずか数週間。 竣介の恋愛事情は、 早速大きな暗礁に乗り上げてしまったのである。
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