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「だからさ~?俺達財布無くしちゃったから昼代貸してくんない?」
「朝も食ってないから昼食えなかったら、辛いなー」
「早く教室に入りたかったら…分かるよな?」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら怯えている生徒に、理不尽な言い訳でお金を奪おうと言い寄る。
友達や親しい友人だったとしても金銭の貸し借りは良い行為とは言い難いのに、到底見ず知らずの赤の他人にはいどうぞ、なんて渡したくはない。
数分黙秘して鞄を抱えて俯いて居たところ、黙ったまま何も言わない生徒に痺れを切らしたらしく一人の生徒が合図を出すと、二人の生徒が殴りに掛かって来たのだ。
「ひ…っ!?」
目を瞑りながら思わず先程まで抱えていた鞄をブンブンと振り回す。
予想しなかったら妨害に一人の生徒が怯んだのも束の間、いつの間にやら背後に回っていたらしいもう一人の生徒が拳を振り下ろそうとした直後。
「―――何してるの?」
男性にしてはやや高めの綺麗な声が聞こえた瞬間、今にも殴ろうとしていた生徒の動きがピタリと止まったのだ。
まるで鶴の一声かの様に全員が声のした方へと顔を向け、声の主を見るや否や顔を赤らめたり顔を青くし出す。
危機一髪助かった事に胸を撫で下ろし彼も不良等と同じく、声のした方へと目を向け…思わず眼鏡の奥にある目を、大きく見開いた。
「…えっ…?」
目を向けた先には何故こんな男子校に女の子が居るのだろう、と目を疑ったがよく見てみればスカートではなく、ズボンを穿いているではないか。
信じがたい光景と人物に何度も目をぱちくりとさせては、不良生徒等と突如現れた声の主を見比べる。
「ねぇ、此処で何してるの?って聞いてるんだけど」
「あ、いや…その…っ」
「っ…もう良い!とりあえず行くぞ!」
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