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 ―――本来ならば、差し出された綺麗な凛の手を握っているのは健だったはず。 なのだが…何故か凛の手を握り握手をしているのは健ではなく、突如現れた170前半の健よりも長身の人物が嬉しそうに凛と握手を交わしていたのだ。 再び突然人が現れた展開に頭が追い付けない健は一人、アタフタと落ち着かない様子で自分の手と目の前で握手をしている凛と長身の人物を、頻りに見比べていた。 「…え…ええっ…!?」 「ちょっと、何で稀伊太が居るわけ?」 「大した理由は無いが、大事な凛に何かあったら何時でも輩を殺れる様にな」 「いや、殺ったら犯罪だし」 「ああ…今日も女王様は身目麗しい。流石凛だ」  目の前で交わされる会話に益々頭が追い付いていけず、置いてけぼり食らう健。 緊張なんてしている暇ではなくさっさとお礼を伝えておけば良かったんだ、と後から後悔の波が次第に押し寄せてくる。 だけどすっかり話し掛けるタイミングを失ってしまった健は、ぽつりと立ち尽くし二人のやり取りを見ていた。 「…ねぇ」 「っ…え!?」 「名前、教えてくれる?」 「え…あ…あっはい!な、長井健です!その…!さっきはありがとうございました…!」 「長井君かー…ん?さっき?…ああ、気にしてない」  にっこりと先程同様の営業スマイルを向ければ、健はカッと顔を赤らめ俯く。 でも何とかお礼を言えて良かったと安心していたのも束の間、新たな問題が健を待ち構えていた。 「おい」 「へ?な、何ですか…?」 「凛は俺のモノだ」  間違っても手を出したら学校に来れないようにしてやる、と耳元で囁かれる。 ヒィ、と今度は顔面蒼白になりながら後退り鞄を抱きながら身を縮め出した。
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