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『彼女の誕生日、あの日智は俺に会いに来たんだよ』
(俺が?あの日、ユウに会った?)
動けない俺の布団を力一杯剥ぎ取り、ユウは俺の足に触れた。
『あの日…智は彼女と別れた後、酔いに酔って俺の所へ来たんだ。フラれたんだって言ってフラフラになってね…』
(思い出せない…)
『そっか…あのことも忘れちゃったんだ…』
(あのこと?どんなことだよっ…)
『あの日、俺の所へ来て、智は泣きながら彼女とのことを俺に話したんだ。そして…智は俺を押し倒し殴ろうとした』
ユウは淡々とあの日のことを語ってくれているが、俺はちっとも思い出せない。
『でもね…殴らなかった。殴らないで俺の上で泣き続けたんだ…それで俺は、弱っているおまえにつけ込んだ』
(つけこむ?)
『無理矢理……俺を抱かせた…』
(…………嘘っ!?抱いた?俺が…ユウを?)
『好きだったから…ずっと好きだったから…でも智は…終わった途端……俺を激しく拒絶した!』
悲しみと怒りを合わせたような、切なくなる叫び声。
『なかったことにしたかったんだろ?だから俺の存在そのものを記憶から消した…』
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