◎ 夜伽 ◎

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「智…ごめんなさい」 夜景が綺麗に見える店の一番よく見える席を予約し、ムードばっちりで食事を進めながら『さあ、今から言おう』と決心した途端、出鼻をくじかれた。 「えっと…何が?」 「私…他に好きな人ができて……ごめんなさい。別れて…欲しいの」 「へ…誰?俺の知ってる人?」 ああ…きっと、まただ。 これで何人めだろ? 「ユウ君…なの」 いつも最後には『ユウ君が好き』って言われてしまう。 結局、おまえもかよ… 「あっそっ…いいよ。べつに…」 「本当に…ごめんなさい」 「“いい”っつってんだろ!!」 “ドンッ”と勢いで叩いたテーブルの上で、皿やスプーンなんかが“ガチャガチャ”っと高い音をたてた。 荒らげた声に周囲は一斉に俺達を見る。 「ご…ごめ…なさ…」 彼女はいたたまれなくなったのか涙を流しながら席を立ち、逃げるように店を出て行った。
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