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♪~
『もしもし…智?今ごろ何の用?』
何かがひっかかり掛けてしまったが、元彼女は電話には出てくれたものの、無愛想もいいところ。
「優奈?悪い。あの…一年前のあの時…」
『何よ!ふざけないでよ!今ごろになって、ほじくり返して文句言おっての?』
「ちが…あの時…おまえ、誰を好きだって言ったんだっけ?」
一瞬の沈黙の後、
『ふざけるのもいいかげんにしてよね…』
明らかに優奈の声は怒っている。
『根に持つにも程があるわ!寝ぼけてるんじゃないの?』
「頼むよ…俺、何故かどうしても思い出せなくて…教えてくれないか?」
俺の言葉に優奈は怒りのこもった低い声で
『ユウ君よ!言っとくけど、ユウ君とは全然連絡とれないままでいるんだからね。これで満足?』
俺にはもう優奈の声は聞こえなかった。
“ユウ”……そうだよ…俺の友達…だよな?
最後に会ったのは…あの指輪を買ったあの日。
それじゃ、指輪は?
『今、彼氏と一緒にいるんだから!邪魔しないでくれる?ちょっと…聞いてるの!』
「ごめん…俺、優奈に指輪を渡してないか?」
『バッカじゃないの?誰と間違えてるのよ!そんなもの、アンタから一度だってもらったことないわ!こんな笑えない話、二度としてこないで』
優奈への電話を切られた後、俺は何度もユウに電話を掛けたが、機械的な愛想のない台詞が繰り返されるだけだった。
しかたなく、疎遠になっていると聞いていたユウの実家へも電話を掛けてみたが、
『大学卒業と同時に完全に家を出て、今日まで連絡一つありません』
ユウの継母は冷たくそう言うと、あっさり受話器を下ろしてしまった。
ユウ…どこにいるんだ?
それより何より、何故俺はユウを忘れていた?
あんなに一緒にいたのに。
何故忘れていたんだ?
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