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「壊したことを謝っちゃダメなの?」
わたしの言葉にネッセルローデくんはうつむく。石をまたポケットに入れた。
「だってアディがすごく大事にしてて、俺にだけ見せてくれたんだ。薔薇みたいに綺麗に薄い石が重なって、宝物だって。そんなの壊れたら……」
「でもいつか言わなきゃ……」
魔法で直せないかな。
もとの姿に戻せたらいいのに。
「……謝ってみる。隠せないもんな。許してくれなくたってこのまま喧嘩してるより……」
わたしとネッセルローデくんはステイマーくんの家の下についた。7階建てアパートで、ステイマーくんの家は5階。
アパートの入口のインターフォンを鳴らす。
「はい?」
誰か女の人が出た。でもステイマーくんのお母様の優しく響く声じゃない。もっと高い声。
「あの、アドルフくんの友達のカリスです。アリーセちゃんもいます。アドルフくんと遊びに来たんですけど……」
「ああ、あの子は昨日の夜からキャンプに行ってるわよ。両親と3人で。帰りは今夜のはずだけど」
「失礼ですが、あなたは」
ネッセルローデくんが大人の対応をすることに驚いた。すごい。
「私はアドルフの伯母よ。留守を預かってるわ。伝言があるなら聞くけれど」
「あ、いいです。アドルフくんに宿題を聞こうと思っただけです。ありがとうございます」
話を終わらせる。
宿題じゃないけど、でも、石はステイマーくんに直接返した方がいいもんね。
「キャンプか……」
そういえば。ネッセルローデくんは続けた。
「アディの家族と俺の家族でよくキャンプに行ってるんだ。どっちかの親がいなくても。俺の父さんとアディの親父さんは親友で、俺とアディもそう。昨日、喧嘩する前にキャンプに誘われてたんだけどうやむやになってたのを忘れてた」
残念そうに言う。
でも少し羨ましかった。
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