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「あれ? アリーセちゃん泣いてる?」
ビョエルンさんはわたしの顔を覗きこむ。わたしは首を振った。
「ああ、そうか。用事思い出した。帰るよ」
「え? あ、うん」
お姉ちゃんは走り去るビョエルンさんを見送る。わたしを抱き締めてくれた。
「貴女が辛そうだからビョエルンは気をきかせてくれたの。素敵な人でしょ? それで、アリーセ、やろうか?」
わたしはお姉ちゃんの顔を見た。『やろうか?』は合図。普段はトランプ占いで簡単な占いをしてくれるけど、本当に占って欲しい時は、すごく当たるのをしてくれる。
でも1日に2回しかできないみたい。
「ん。えっと、わたしのこととネッセルローデくんのことを……」
「帰ろう。すぐに見てあげる」
微笑んだお姉ちゃんはわたしの髪の先を指ではねてくれる。
腰まで伸ばした髪の先のくるっと回った部分をお姉ちゃんの指ではねられると、花びらが舞う。それが大好き。
「ビョエルンさんとのお出かけの邪魔してごめんなさい」
「いいのよ。あの人は無職だからいつでも会えるし。でも彼の弟はすごいらしいのよ。偉い司祭様になるんだって」
誰も通らない裏路地に入ってお姉ちゃんはすぐにほうきを出す。そうしてわたしを後ろに乗せてまたがった。
「ひゃあっ」
とぷんと地面にめり込む。そのまま地下に落ちて地下水路に入り込んだ。
地下を流れる下水道のそのまた地下の水路には数人の魔女が飛び交う。空は人間に見つかりやすいからってこっちの道を通ることが多くなったって塾で習った。
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