わたしは魔女で彼は人間

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「アディ……きったないな……」  ネッセルローデくんがステイマーくんの机を片付け始める。わたしは何も出来なくて立ち尽くした。 「!」  足音が聞こえてわたしはネッセルローデくんに伝えた。  ネッセルローデくんは慌ててわたしを連れてステイマーくんのベッドの下に潜る。  隠れるなんて悪いことしてるみたい。 「アリーセちゃん、しゃべっちゃダメだよ。きっとアディの伯母さんとかだけど、他人が家に入ってたらいい気しないだろうし」  ネッセルローデくんはベッド下の板をずらす。下に部屋が現れた。階段で降りる感じで、普通の部屋と同じ感じがする。 「アディはまだ10歳になってなかったからこの秘密部屋のこと知らないんだ。二桁になった大人だけの秘密」  わたしを入れて自分も入ると、ネッセルローデくんは板を再び閉めた。四隅の鍵をかけて多分上からは動かないようにしてる。 「もし上を塞がれたら?」 「大丈夫。外に逃げる通路もちゃんと聞いてる」  部屋の中はぐるりと本棚で囲まれていた。置かれている本の背表紙は読めない文字ばかり。  真ん中に大きな机があって、椅子もある。  机の上には黒い表紙の本が一冊だけ置かれていた。 「なんだろ……」  ネッセルローデくんは本をぱらりとめくる。  その時、上から声が聞こえた。 「あの子どもは生きてるそうね」 「ああ、ヴァンパイアの一家に保護されたらしい。やっかいな家族だから手は出せないな」 「まあ、回復したら呼び戻せばいいわ。ある程度したらまた事故でも起こればいいんだし」  わたしはその声に全身鳥肌が立つ気がした。
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