わたしは魔女で彼は人間

3/22
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「わたしはネッセルローデくんと付き合ってないよ。アギーは誰が好きなの?」  えっ? アギーは目を見開く。黒い前髪で隠してても分かる大きな目はわたしにとって羨ましい。 「私はっ、ネッセルローデくんが好きなわけじゃないから……。私に遠慮とかしちゃ嫌。アリーセにお似合いだし、二人とも好きだから……」 「ネッセルローデくんと同じこと言う。わたしはただネッセルローデくんにステイマーくんのことを聞いてるだけ。アギーこそネッセルローデくんとお似合い!」  笑いかけるとアギーはわたしを鞄で軽く叩いた。そのまま教室から走って出ていく。  長い黒髪が綺麗に揺れて羨ましいな、ほんとに。 「わたしも、アギーみたいに可愛かったらな……」  手のひらを重ねる。  一度胸に持っていって再び元に戻すと、手の上に青いリボンが現れた。  今使える魔法はこれだけ。 「ステイマーくんの好きな色。わたしに似合ったらいいのに」  リボンを頭につけてみる。こんな可愛いのは似合わない気がする。 「月曜まで長いなぁ」  ステイマーくんと会えない。電話が気軽にできるほど仲良くないし、遊びに行くくらい話すこともできない。  手帳を開く。  今夜の塾のスケジュールの隣にメモがあることに気付いた。  ステイマーくんの誕生日。  今日がステイマーくんの誕生日だったんだ。 「わたしお祝いも言えてない。間違えないように書いてたのに」  ため息をついてしまう。  いつも肝心なところで忘れちゃう。  月曜じゃ遅いって思われるかな。でも、ステイマーくんの好きなお菓子を作ったら喜んでくれるかな。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!