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「わたしはネッセルローデくんと付き合ってないよ。アギーは誰が好きなの?」
えっ? アギーは目を見開く。黒い前髪で隠してても分かる大きな目はわたしにとって羨ましい。
「私はっ、ネッセルローデくんが好きなわけじゃないから……。私に遠慮とかしちゃ嫌。アリーセにお似合いだし、二人とも好きだから……」
「ネッセルローデくんと同じこと言う。わたしはただネッセルローデくんにステイマーくんのことを聞いてるだけ。アギーこそネッセルローデくんとお似合い!」
笑いかけるとアギーはわたしを鞄で軽く叩いた。そのまま教室から走って出ていく。
長い黒髪が綺麗に揺れて羨ましいな、ほんとに。
「わたしも、アギーみたいに可愛かったらな……」
手のひらを重ねる。
一度胸に持っていって再び元に戻すと、手の上に青いリボンが現れた。
今使える魔法はこれだけ。
「ステイマーくんの好きな色。わたしに似合ったらいいのに」
リボンを頭につけてみる。こんな可愛いのは似合わない気がする。
「月曜まで長いなぁ」
ステイマーくんと会えない。電話が気軽にできるほど仲良くないし、遊びに行くくらい話すこともできない。
手帳を開く。
今夜の塾のスケジュールの隣にメモがあることに気付いた。
ステイマーくんの誕生日。
今日がステイマーくんの誕生日だったんだ。
「わたしお祝いも言えてない。間違えないように書いてたのに」
ため息をついてしまう。
いつも肝心なところで忘れちゃう。
月曜じゃ遅いって思われるかな。でも、ステイマーくんの好きなお菓子を作ったら喜んでくれるかな。
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