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「フォルケルさん」
先生に呼ばれてわたしは顔を上げた。
「フォルケルさん、今はここに浮遊してる精霊の言葉を書き取る実践ですよ。フォルケルさんのペンは……」
羊皮紙に走るインクの文字を目で追う。
内容に気付いたときに、わたしの顔がすごく熱くなって耳がじんじんした。
「アドルフ・ステイマーくんのお嫁さん、アリーセ・ステイマーになりたい。アドルフくん大好き。お誕生日おめでとう」
前の席の男の子が振り返って大声で読み上げる。
「ち、違うんです! これは! 本当に精霊がっ!!」
精霊はわたしの心を読み取って書いたらしい。それは分かってもらえたんだけど、それ以上にみんなにステイマーくんの名前が知れわたった。
「アリーセ、アドルフくんって可愛いの? かっこいいの?」
休み時間にみんながわたしの席に集まる。観念してわたしは携帯で撮影したステイマーくんの写真を見せた。
バスケットをしてるところを空を撮るふりをして写したステイマーくん。
いつもシュートがかっこよくて、決まったときの笑顔が本当にきらきらしてる。
背はまだわたしより低いけど、絶対大きくなるって占いで出た。
お母さま譲りの緑の瞳がいつも宝石みたいに光を反射してて、優しく響く声も大好き。
嫌なところを見つけるのが不可能なくらい全部好き。
それを説明したら、みんな苦笑した。みんなはきっとステイマーくんに会ってないからどんな人か分からない。
でも会わせたくない。
だってここの魔女のみんなはすごく可愛いもの。アギーも、みんなも可愛くて、わたしなんて振り向いてくれなくなる。
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