わたしは魔女で彼は人間

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 ショックだった。  ステイマーくんのお話が聞けないのもそうだけど、二人が喧嘩したことの方がショックだった。 「仲直りしないの?」  そう聞いても「うん、絶交した」って言うだけで仲直りしてくれそうにない。  後はいつも通り学校の話や宿題の話とかをして終わった。  電話を切って、悲しくて泣いてしまう。  仲良しの二人を見てるのも大好きだった。運動が得意なステイマーくんと勉強が得意なネッセルローデくんと、お互いに得意なことを教えあってたりして。  アギーも二人を好きだったと思う。 「仲直りの魔法ないのかな」  わたしはパパがお仕事をしてる部屋に向かった。  パパのお仕事は魔法を作り出すもの。日々新しい魔法の言葉や魔方陣、手順を作っては試している。  試すと言ってもちゃんと魔法が漏れない部屋でやってるから呪いをしたって他の人に害はない。 「パパ」 「アリーセ、明日はお休みだけどもう寝ないといけないんじゃないのかい?」  パパに抱きついてさっきの話をした。パパはしばらく考える。 「ステイマーくんとネッセルローデくんが喧嘩したのは悲しいことだな。でもアリーセ、仲直りの魔法もおまじないもしちゃいけないよ」 「どうして? 仲良くしててほしいもの」 「心は動かすものじゃないんだよ。パパは確かに頼まれてそういうのも作り出してる。でも二人が喧嘩したのなら二人が仲直りしたいと思うまで待ってあげた方がいいとパパは思う。仲直りしたくなったら、アリーセが二人のお手伝いをしてあげるといい。心を魔法で動かしてしまうと、本当のステイマーくんが消えてしまうかも知れない」  ステイマーくんが消える?  魔法を使ったら。 「魔法は怖いの?」 「正しく使えば怖くない。正しい、は少しずつアリーセが見つけていったらいいよ」  パパはわたしにおやすみのキスをしてくれる。  でもわたしは二人が喧嘩したことがまだ苦しかった。
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