165人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
そんな俺の心の声を知ってか知らずか、嬉しそうに傘をくるくる回しながら隣のアイツは続ける。
「それにな、傘でみんな道行くすれ違う人の顔なんか見てへんし。
帽子とか伊達眼鏡で頑張って変装せんでええやん。
いつもと違ってそれもまたドキドキするわぁ。」
傘の縁からちらりと見遣って、照れくさそうに笑ってみせた。
うわぁ、なにこのコ!
汚れてる自分には眩しすぎて直視出来んやんか!
テレビカメラ回ってなくてもめっちゃキラキラしとるわぁ。
…って、知ってたけどな!
コイツがええヤツやなんて今更、メンバー1よぉわかってるわぁ。
もぅ、こーゆートコ、みんなに『可愛え』とか『守ってあげたい』とか言われる所以なんやろうな。
いざというとき素直になれない自分と正反対やわ…。
今も隣で、雨で濡れたコンバースの靴裏が歩くたび、タイル敷き詰めた歩道と鳴いて、イルカの歌みたいやなぁ・なんて呟いてる。
小柄で身軽な身体で、一歩ずつステップ踏むみたいに。
きゅ・きゅう・きゅっ・て。
最初のコメントを投稿しよう!