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街一番の時計塔は、隣街からも見え、人々の時間を刻んでいる。
夜は塔の頂上に明かりが灯り、飛行機の道しるべにもなっている。
それ以外は特に目立った特徴のない、山間の小さな街。
俺はそこに越してきて、そろそろ半年になる。
「イチ!今日なんか予定ある?」
「今日?別にないけど。」
「じゃあ、渡り鳥見に行こうぜ!今日到着するって、ニュースで言ってた!」
「渡り鳥?シンお前、ほんと生き物好きだね。」
「ま、実家が実家ですからね。」
「そうか。」
友人のシンの父親は、時計塔のメンテナンスを、母親は、時計塔の掃除を仕事にしている。
単純に高いだけの塔は、動物にも格好の休憩所らしく、鳥が方角の目印にしたり、うさぎが日陰を求めて寝に来たり、たまにリスが木の実を隠しにくることもあるそうだ。
「オヤジやお袋は仕事でやってるけど、俺はボランティアだぜー!せめて小遣い上げて欲しいね!」
と愚痴を溢しながら、うさぎが起きるまで側にいてやったシンの笑顔を、俺は今でも覚えている。
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