0人が本棚に入れています
本棚に追加
どれくらいの時間が経っただろう。
時計がないから時間がわからない。
現状はいまだに変わらない。
私は部屋に閉じ込められたままだ。
しかし、不思議なことに気がついた。
何時間もいるはずなのに空腹を感じないのだ。
それだけではない。
眠気も感じない。
排泄もできない。
喉も渇かない。
一度寝たらこの悪い夢も覚めるかと思い、寝ようと試みたが、全く眠れなかった。
人間として当たり前の欲求が起こらないのだ。
私は自分が人間じゃなくなったのだろうか、とさえ思った。
そう考えると身が切られるような不安に駆られる。
私は自分がこのような不条理な非日常に遭遇して初めて日常の大切さを知った。
同じ事を繰り返していくあの退屈な日々は実は最も幸福なことなのだ。
私は帰りたかった。
あの退屈な日常に。
白い壁はしかし、そんな私をただ無表情に見下ろしていた。
最初のコメントを投稿しよう!