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ガタン。
不意に音が部屋に響いた。
私が驚いて音がした方を振り向くと、そこには鏡があった。
いつの間にあったのだろう。
全身が写るくらいの大きさの鏡だ。
私はふらりとその鏡の前に立ってみた。
疲労が見える私の顔が私を見返してきた。
ふと鏡の中の私が表情を変えた。
笑顔。
まるで嘲るような笑いだ。
私はそれを無表情で見続ける。
「ここはどこ?」
ぽつりと私の口から言葉が漏れた。
もはや疲労困憊だった。
返事などあるわけがない。
しかし、あったのだ。
「ここは部屋だ」
鏡の中の笑っている私が言う。
「どうすれば帰れる?」
「簡単だ。部屋から出るにはどうする?」
「ドアを開ける」
「そうだ。ならドアを開けないとな」
「ドアなんて無いじゃないか」
「そうか。なら出られないな」
「頼む。私はここから出たいんだ」
「お前が知らないことを私が知るわけないだろう。私はお前なんだから」
鏡は割れた。
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