私と古本屋の関係

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暖かい日差しに少し肌寒い風、つまり春を迎えようとしている3月中旬。 私、神山 みやび(カミヤマ ミヤビ)はとある古本屋でアルバイトをしていた。 「みやびちゃんや、奥の本棚の整理お願いしてええかのぅ。高い所は手ぇが届かんくてなぁ…宜しく頼んだぇ。」 のそりと姿を現したのは、おじいさん、もとい此処の主人だ。 丸まった背中を支えるように杖をつきながらのんびりとした口調で言い終わると、返事も聞かずにおぼつかない足取りで自室へと帰って行く。 これもいつもの事だ。要件が済むとすぐに姿を消すのは1年前から変わらない。 「…………………。」 読みかけの本に詩織を挟み、仕事を片付けるべく椅子から立ち上がると自身の足を目的地へと向けた。 私が此処を知ったのはちょうど1年前。高校の帰り道をふらふらしていた時に見つけた。 元々読書が好きだった私は興味本意で入ったが、所狭しに並べられた本の数、図書館に置いてありそうな古い文献……その他諸々に驚かされたのだ。
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