私と古本屋の関係

5/6
前へ
/12ページ
次へ
懐かしいな… 左から五十音順に並んであるかどうか確認しつつ、違ったときに並び替えをしながらふと感じる。 人差し指で背表紙をなぞり、黙々と仕事を進めていると、 ……ん? 何も書かれていない、他より少し埃がかったのに目が留まった。 変だな、これだけ見たこと無い。 ……てか、こんなのあったっけ? 取り出して表裏をみるがやはり記憶には無い。特に古い物は大体が二階かおじいさんの部屋にしか保管しない。 ならばお客の忘れ物だろうか、とも考えたが奥まで入ってくる人はそうそういないはず……… もやもやしつつ、どう処理するかを聞くためにおじいさんの部屋へと歩く。 扉を開け中に入ると麦茶のいい香りが漂っていた。 「あの、これ………」 湯呑みを口から外し、本を見たおじいさんは少し驚いた様子で私に視線をずらす。 「そうかい、あんたが選ばれたのかい……」 にっこりと待ち人を見つけたように笑い小さく呟いた。 「選ばれたって何にですか?」 「今手元にあるそれにじゃよ。」 意味が分からないとでもいうように首を傾げた私に対して、おじさんは余裕綽々とした様子で椅子に座りなおす。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加