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懐かしいな…
左から五十音順に並んであるかどうか確認しつつ、違ったときに並び替えをしながらふと感じる。
人差し指で背表紙をなぞり、黙々と仕事を進めていると、
……ん?
何も書かれていない、他より少し埃がかったのに目が留まった。
変だな、これだけ見たこと無い。
……てか、こんなのあったっけ?
取り出して表裏をみるがやはり記憶には無い。特に古い物は大体が二階かおじいさんの部屋にしか保管しない。
ならばお客の忘れ物だろうか、とも考えたが奥まで入ってくる人はそうそういないはず………
もやもやしつつ、どう処理するかを聞くためにおじいさんの部屋へと歩く。
扉を開け中に入ると麦茶のいい香りが漂っていた。
「あの、これ………」
湯呑みを口から外し、本を見たおじいさんは少し驚いた様子で私に視線をずらす。
「そうかい、あんたが選ばれたのかい……」
にっこりと待ち人を見つけたように笑い小さく呟いた。
「選ばれたって何にですか?」
「今手元にあるそれにじゃよ。」
意味が分からないとでもいうように首を傾げた私に対して、おじさんは余裕綽々とした様子で椅子に座りなおす。
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