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クルリと踵を返して私はそのまま立ち去ろうとした。
それなのに……
「ちょっと!離してよ」
私の右手首はさとしにグッと掴まれて、離そうとしても離れない。
「ちょっ……いった!」
逃げようとする私を、逃がすまいとするさとしの力が強くなって、思わずそう叫んでた。
「あ……わりぃ」
あっさりとその手は離されて、思わず仰け反りそうになる。
それを慌てて引き寄せられて、今度はさとしの腕の中にいた。
「……っぶね
お前、どんだけ力一杯拒否してんだよ!」
子供だった幼馴染みの、子供とはいえない広くて固い胸に私は動揺する。
――恥ずかしい。
ただ、それだけしかなかった。
だから両手で胸を突っぱねて、急いでさとしから離れる。
このドキドキは免疫がないからであって、決してこいつにドキドキしてるわけじゃないんだと、自分に言い聞かせて。
「そ……そりゃ、拒否するでしょうよ!
少しでも可愛くしたくて髪を切りに行こうと思ったのに、なんでその辺のやつに切ってらわなきゃなんないの?
だったら自分で切るっつーの!」
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