それは始まりの音

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お母さんは去年の冬にこの世を去った いつも暖かい笑顔を私やお父さんに向けていたお母さんが、去年の冬以来居なくなってしまった 原因は交通事故 お母さんが近所に買い出しに行っていたとき、信号無視の車を避けた車に轢かれたと聞いた 私はお母さんの顔を見ることが恐くて、眠った姿は見ていない 身体中傷跡があり、原形を留めていないというのが医者の言った最後の言葉だ その後は私が聞くことを恐れて逃げてしまった その償いとは言わないが、毎日お墓参りには行っている 時々、事故を起こした信号無視の車に乗っていた人の親族と避けようとして轢いてしまった人の親族が姿を見せていた 私は、お母さんのお墓に触れないならお墓参りしてもいいと言った それでも、まだ許せないと思う自分がいる 私はあの人達を許してもいいの? 私は、写真を見ながらそう思った
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