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**************  一人、部屋に取り残された紗代は横になったままそっと手の平を見つめていた。 (ここ……どこだろう。…それに、巫女、って……? …そういえば。さっき、あの男の子の声を聞いたような…。…………。…私。もしかして…倒れたのは無駄なことだったりした……?! だってあの子も言ってたけど、確かに…思い返せば私あの…世緒に巫女だとか何とか言われて突き落とされ、て…。……私、馬鹿だ…………)  布団に入っていたはずなのに冷たくなっている手で顔を覆う。 (……。…選択を迫られた時は、とにかく必死で……。そんなの頭になかったよ……)  空笑いを零して顔を掛け布団に潜りこませる。相変わらず自分はそういうところで馬鹿なのかもしれない。 その時。パタパタパタっという幾つかの足音を聞いて、紗代は顔を出して視線だけを廊下の方へ向けた。 (……誰だろう…)  ――とはいえ、ほとんど知らない人ばかりなのだが。  スパンっという小気味良い音と共に障子戸が開け放された。  そこには、三人の男たちが立っていた。 (……誰、かな…?)  三人とも昨日見た気がするが、どうにもよく思い出せない。  そのうち一人は、ボーっと見ている紗代の傍まで駆け寄ってくると、そのまま紗代を抱きしめた。 「……きゃ…っ」  小さく悲鳴が零れる。 「良かった…!! 良かったよ…! 俺、もうずっと目覚めてくれないんじゃないか、って……!!」  声も出ないしどうすれば良いのか分からないしでされるがまま固まっていると、一緒に来た銀髪の男の人が手に持ったお盆で彼の頭を思い切り叩いた。  ガン、と鈍い音が響き、叩かれた本人は恨めしげに叩いた男を見上げた。 「…ってえな、左之…! 何しやがんだよ…!」 「それはこっちの台詞だ。何いきなりくっついてんだよ。彼女、困ってんだろうが」 「しかも病人だろ?」  短い茶髪の小柄な男の子も傍まで来て半目になる。 「……。…あぁ!! すまんすまん。悪かった」  ようやく気づいた様子で彼が腕を解いてくれる。  三度横にされながら、紗代は横に腰を落ち着けた彼らを見た。 「いや~、すまん。気づいてやれなくて。…でも良かったよ、ほんと」  短めの黒髪を横で留めた頭を掻きながら、紗代を抱きしめた彼は朗らかに笑った。 (――悪い人じゃない、のかな)  薄く口元を緩めると、銀髪の男の人は湯呑みを紗代の傍に置いた。
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