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「山崎……さっきまでここに居た奴からだ。あいつは副長たちに呼ばれてったから少し遅くなるとさ。水。な? …起きれるか?」
倒れないように今度はゆっくりと両腕に力を込めて上体を起こすと、銀髪の男の人が手を背に当ててくれた。
おかげで無事に起き上がることができ、湯呑みに口をつける。
「ありがとうございます」
水を全て飲みきると、口元をほころばせて小さく頭を下げた。
三人はその突然の行動に、目を丸くしてポカン…と固まっていたが、やがて苦笑して彼女を見つめた。
「…まさか、ありがとう、なんて言われるなんてな」
「本当だよ。……ねぇ、君。怒ってないの…?」
茶髪の男の子の問いに首を横に振る。
「怒ってなんかいません」
そこまで言って自嘲気味に笑う。
「…飲む、って結果的に決めたのは私ですし、こうして……」
両腕を軽く広げて見せる。
「生きてますし。ね?」
首を傾けて片目を眇めると、銀髪の人が微笑して紗代の頭をそっと撫でた。
「やっぱりお前、変な奴だな」
「へんな……?!」
「でも。良い娘だ」
その言葉に返す言葉を失う。
――今までその言葉は何度も言われたことがある。だけど…。
(何だろう。とっても…心が温かくなって嬉しい)
「そうだな!! あんな得体のしれねえ奇妙な薬、普通飲まねえよ! 度胸あるよな、あんた!!」
笑っている黒髪の人の言葉には悪意など無いのだろうが……。
「……新八。お前が変なこと言うから。この娘、何か言いたそうだぜ…?」
銀髪の青年が紗代を軽く突っつく。
「ほら。遠慮なく言ってやれ」
「…え。……あ、あの。……えっと……それは、褒め言葉として受け取っても良いんでしょうか…?」
恐る恐るといった様子で訊ねると、茶髪の少年が噴き出す。
「はははっ。確かに!! 新八のあの言い方、めちゃくちゃ悪口めいてたよな!! ははっ、新八、言われてやんの~!」
「……俺、褒め言葉のつもりだったぜ…?!」
「聞こえねえんだよ、お前の場合はよ」
腹を抱えて笑いだす少年。その隣で慌てる黒髪の人。そして私の傍で苦笑を零す銀髪の青年。
「……ふふ…っ」
――すごく、安心できるあったかい人たちだ。
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