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身体が、軽い。
ふわふわとした、不思議だけれど心地良い感覚。
そのまま全て投げ出して眠っていたい気分だった紗代は、何か――身に迫るモノを感じてソッと目を開けた。
そうして、まず視界に入ってきたのは浅葱色――というべきだろうか。どこか現実離れした浅葱色の夜空。
そして――
「あれ? もう起きちゃったんだ。残念。今から何しちゃおうか考えてたのに」
――何故か満面の笑みで変態発言をしている少年(?)だった。
「――――?!?!」
何が何だか分からないなりに、立ち上がってズルズルと後退る。
少年(?)の顔は逆光になって見えなかった。分かるのは、小柄ながら男の子らしいしっかりとした体格と短い髪だということ、それと唇の形だけだった。
「…あれ。悲鳴、上げないんだ」
「――……………」
「……ふ~ん…。目はこんなに正直に警戒してるのにね」
屈んで紗代の目を覗き込んでいた少年は、スッと立ち上がった。
そうして軽く地面を蹴ると、彼の身体は宙に浮いたまま止まった。
「ふぅ。やっぱりこっちの方が楽だ」
「…………。…あの」
「あれ、話せるんだ? へ~」
どこまでも小馬鹿にしたような言い方にムッと頬を膨らませると、彼はクスクスと愉しげに笑った。
「ごめんごめん。…で? 何か用?」
「…ここは何処ですか? あなたは、誰…?」
その問いに彼は少し目を見張って、すぐにフッと笑った。
「ここは夢の中。そしてキミの世界と他の世界を繋ぐ場所でもある。…僕は……そうだなぁ。キミの選択次第で出逢う、とある人物の生まれ変わり、ってところかな。とりあえず今は世緒(せお)、とでも呼んでおいてよ」
「とでも呼んでおいてよ、って……」
――適当過ぎやしないか。
呆れ顔になった紗代に彼は微笑した。
「――いつもそうしてたら良いのに」
「……え…?」
ぽかん、と問い返すと、彼は切なげな瞳で紗代を見た。
「…あの時、僕と出逢わなければキミはこんなことには……」
ぽつり、と紗代に聞き取れるか聞き取れないかという小さな声で呟くと、彼は顔を上げてニヤリと笑みを浮かべた。
「キミ、悲しいね」
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……――――ちりん。
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