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鈴を鳴らすと、途端に地面が変わりだした。
――ううん。変わった、というよりも。地面に映像が映し出されている感じ。
ヨーロッパ風のモノ。ジャングルのような草木が生い茂っているモノ。はたまた何もない荒野のモノ。……。
「…もうそろそろかな……」
隣辺りの空中での呟きに視線を地面から話して顔を上げると、ちょうど彼の腕が伸びてきた。
「――……な、何ですか…?」
スッと距離を取ろうとするより速く、彼の手が紗代の腕を捕らえた。
「逃げないで。…どうせ逃げ場なんてどこにもないよ」
それがまるで現実の世界でのことを言われているようで、知らず知らずのうちに彼に背を向けたまま目線を落とした。
彼はそんな紗代の様子に苦笑すると、彼女の肩に手を置いて耳元に唇を近付けた。
「気持ちは言わなきゃ伝わらないよ。…無視を恐れないで。僕はいつだってキミの味方だから」
「どうして…? 会ったばかりの私を……」
「あ、ほら来た来た」
驚いて彼を振り返ったときには、紗代の身体は強く押されて斜めに傾いでいた。
「――またね。彼らとうまくやるんだよ。素直に、ね? 巫女の紗代ちゃん……」
――巫、女…? それにどうして私の名前を…………
疑問の言葉は声にならず、身体は地面ではなく深い水底へと落ちて行った……―――。
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