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「彼女に選ばせてはどうでしょう。その薬を飲むか、殺されるのを覚悟で決断が下るのを待つか」
「そうだね。俺もそれで良いと思うよ。勝手に決められるより、自分で選んだほうが後悔も少ないだろうし。ね?」
静かに告げた男性の隣で、胡坐をかいた赤毛に近い髪の人もにこりと笑った。
「…斎藤くんや沖田くんがそう言うんです。彼女に念のため訊いてみますか?」
山南さんが背に問いかけると、小さく舌打ちして土方さんは元の位置に座りなおした。
「……分かった。…おい、お前」
「…は、はい」
「……二つに一つだ。選べ」
「…………」
視線を軽く伏せて考えを巡らせる。
――どうする? …こんな、突然訳の分からないことになって。…だけど、そこで何もせず死ぬなんて訳がわからない以前に馬鹿げてる。どうせ死ぬ確率の方が高いんだったら―。
「……飲みます」
賭けてみるしかない。そう思った。
手を懐紙に伸ばすと、山南さんが湯呑みに入った水らしきものを傍に置いた。
――最初から、飲んでもらうことが前提だったのだろう。
手の中の粉をじっと見つめる。もう取り返しは付かない。
(――――よし)
二、三度軽く深呼吸をして気持ちを落ち着けると、紗代は懐紙の上の粉を一気に飲みこんだ。
ピキッ。
途端に。頭の芯に亀裂が入ったかのように鋭い痛みが駆け抜けた。
「――っ…」
頭を押さえると、当てた手を通じてズキズキとまるで頭が脈打っているのかと疑うほどに振動が伝わってきたような気がした。
「……ぅ…っ」
痛みになんとか耐えていると、お腹もズキリと痛み出した。
「……ぃ、たい…………」
今まで沢山の病気を経験してきたけれど、ここまで酷いのは果たしてあっただろうか……。
――目の前が、ちらつく。視界が霞んで全然見え、ない……。…あれ…? おかしいな。どうして部屋が、傾い…て……。
紗代の身体は、力を失くしてグタリとその場に崩れ落ちた。
**************
「……どうだ、山崎」
斎藤が問うと、山崎は静かに首を振った。
「…………酷い高熱です。……正直なところ、これで本当にもつのかどうか…」
「…そうか……」
倒れた少女を一室に運び込むと、彼女の顔面は真っ青を通り越して紙に近く真っ白になっていた。
気を失っていてもなお痛くて堪らないのか、時々彼女は小さく呻いていた。
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