14人が本棚に入れています
本棚に追加
カーテンが引かれた薄暗い部屋の中、1人の少年が布団にくるまっていた。
光源は少年が持つ携帯電話のみ。
携帯電話の液晶を指でタッチし、画面をスクロールさせる。
先ほどとは違うページが開かれ、大量の文字の羅列が目に飛び込んでくる。
少年はさらに複数の動作を行い、ネット上で繰り広げられる意味の無い討論に参加する準備を整えた。
ユーザー名<クオン>。電脳世界にいるもう1人の自分の名前だ。
何度も書き込んで、身体が覚えた動作で名前とIDを打ち込む。
スレッドという名の会議室に入室すると、ある一文に目が止まった。
『おい、聞いたか? アニメやゲームを禁止する法律ができるって噂』
その噂は以前、一部のユーザーの間で流行っていた話題だ。
その後は何も新しい情報が出ず、偽情報として扱われていたはずだが…
嘘だとわかっていたが、一応返信だけはしておく。
少年が書き込んでから五分も経たずに新たなコメントが追加された。
『政府はどうやら本当にやるらしいぞ。
たぶん明日… 早ければ今日中に…』
そのコメントを見て、少年は小さく舌打ちをする。
簡単に偽情報に流されるこのユーザーにも腹が立つが、今の政府への不満がそれを上回っていたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!