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しかし、そうすると相手の頭に私が頭突きしてしまう形になるわけで。
ゴスッ。
二人して頭を抑えながら芝生に転げまわるという、周りからみたら相当おかしな図が完成してしまった。
痛みに耐えること数十秒後。
改めて涙目の目で相手の顔を見る。
見た目は少し髪が長く前髪なんかは目にかかっている。だが、ときどき覗き見える目は少し吊り上っていてキリッとしている。
不覚にも「かっこいい」と思ってしまった。
私の視線を感じたのだろうか。彼はうっすらと目を開けて不思議そうに首を傾げ言った。
「俺の顔になんか付いてる?」
「いや、そういうわけじゃ」
二人して押し黙る。
なんか気まずいな…。
そ、そうだ!
「「あの…!」」
二人の声が重なる。
「そ、そっちからどうぞ」
私が言う。
「い、いや。君のほうから」
彼が言う。
「いやいや、そっちから」
「いやいやいや。君から」
二人して相手に譲ろうとする。
傍から見たらおかしな二人組だろう。
この会話を数回繰り返してるうちに彼は言った。
「わかった。俺から言うよ」
観念したように彼がため息をついた。
それを見た私はなんだか笑えてきてしまった。
「な、なんだよ」
「別に、何でも」
私が笑いながら答えるとムスッとした顔のままだったが答えた。
きっとこのままじゃ話が進まないと思ったのだろう。
まぁ、当たってるけどね。
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