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もがいて抵抗していると、不意に甘ったるい声がすぐ近くで聞こえた。
「マスター!ゆう君!早く行こうよぉ!」
声の主はタイが首が絞まって、引きずられている俺に構うことなく腕を絡ませてくる。
「ゆかりちゃん。俺とこいつ、まだ一仕事残ってたんだわ。
先に行っててくれる?」
「えー。まだお仕事するんですか?ゆかり、お手伝いします!」
「いや。お客様に手伝わすわけにはいかないよ。
こいつと二人でちゃっちゃと終わらせて、すぐそっち向かうよ。」
「そうですかぁ。じゃ、待ってますね。」
上目遣いで、名残惜しそうに腕を解き、去って行く。
その後姿を見やり、盛大に溜息をついた。
「あー。お前、今夜勝負しかけてくんぞ。ありゃ。」
「だから、行きたくないんだよ。」
思いっきり身をよじり、マスターの手を振り切った。
「あいつ、関わりたくねぇ。」
「あー。まぁ、そうだな。あいつ、猫被ってんのばれてないと思っているみたいだからなぁ。
こっちとしても、一応、お客様として接することで一線引いてるつもりなんだが。
寧ろ、客であることを逆手に取って、詰められるとこまで距離詰めてくるつもりなのかもしれないな。」
「・・・勘弁してくれよ。」
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