~真昼の月~

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   またか……と思いつつ、小暮は胸ポケットのレコーダーを確認してベッドから降りた。ふたりの会話は理解できなくとも、それを記録するのが彼の仕事でもあったからだ………。  およそ半月前、経産新聞社に勤める小暮に編集長から呼び出しがかかった。彼は社が発行する経済雑誌『経産ジャーナル』の記者であり、ベンチャー企業関連のコラムを手掛けていた。  編集長に呼び出された彼は開口一番、思わぬ言葉を耳にする。  「小暮、おまえアフリカ行って筑波大学の工業研究を取材してこい」  「アフ!?アフアフ―」  「そうだアフリカだ」  もちろん意味が分からなかった。研究といえば社が発行する科学雑誌『経産フューチャー』が取材するはずである。まったく畑違いの自分が、なぜアフリカに行かなければならないのか?  「実はな………フューチャーで創刊10周年パーティーを開いたんだが、そこで集団食中毒が起こった。佐久間っちゅうベテラン記者が同行するはずだったんだが、そいつも病院に運ばれちまってな。アッチは記者不足でてんやわんやなんだわ」  「はあ………」 .
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