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「沼泉はオレの後輩だから、編集長のメンツを保ってやりたいんだよ」
「はあ………いやいや、しかしですね」
「記事を書けとはいっとらん。現場の話や説明を記録してくりゃいいんだ、バカンスだと思え」
思えませんよ、とは言えなかった。アフリカといえばバカンスよりアドベンチャーのほうがしっくりくる。そしてよくよく聞けば、目的地は赤道直下、ケニアはビクトリア湖の東端だという………俺がいったい何をした!彼は内心、何度も何度もそう叫んでいた。
そんな彼の悲鳴とは裏腹に、筑波大学が行う実験は実に重要なものだった。アフリカに出発する前、小暮は実験チームの責任者、大場教授と実験監督の佐原助教授に大まかな説明を受けていた。もちろん担当記者と違い、自分は経済畑で科学にまったく疎いことを告げたうえである。
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