~真昼の月~

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   宿営テントはアマテラスの横に3つ備えられ、ひとつは実験の制御テント、残りはチームの宿営に割り当てられた。チームは総勢20名で大場教授と佐原を中心に学生が17名、そこにオマケの小暮がくっつく形である。  すべての準備が整いセグメントで試料が混ぜ合わせると、ひとときサバンナに拍手と喝采が沸き上がった。多くのものにとって、この瞬間は人類の偉大な一歩となるのだから、小暮もささやかな祝いの言葉を贈ったりもした。  だが、精錬試料を分析すると祝いのムードは一変する。たった0.5gの精錬試料の成分に、偏りが見つかったのだ。誤差は予測していたが、この偏りは、誤差の範囲よりわずかに大きかった。  当初はセグメントの重心が狂っていると思われたため、調整をし直して実験は再開された。だが、またしても予測された誤差よりも大きい偏りが現れた。しかもこの誤差は、コンマ以下10桁まで前回の偏りと合致していたのだ………10億分の1まで誤差が同じになることは有り得ない………ここにきて、何か重大な見落としがあるのではと全員が思うに至っていた。  そして3回目の今日、試料を分析した結果、案の定同じ結果が現れたのだ。  摂氏40度の気温の中、実験は実に芳しくない方向に進んでいるようだった。 .
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