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そして自己紹介は何事もなかったかのように進められた。
赤髪の少年がスルーするのは分かりきった事だったが、彼のクラスメートたちのスルースキルも半端ない。
動揺しているのは、赤髪の少年の前に座っている少女くらいだった。
自己紹介は終盤を迎え、赤髪の少年の前に座っている桜色の髪をした少女の番になる。
自己紹介は順番が過ぎるごとに言う内容が決まってきたようで、名前、得意属性、最後に一言を添えるというものになっていた。
彼女は立ち上がり、周りを威圧するように言葉を発する。
「エリカ・フランベルジュよ。得意属性は風。よろしく」
あまりの素っ気なさにクラスメートの一部は一驚していた。
先程までくだらないコントをしていた少女と同一人物とは思えなかったからだ。
だが、彼女を知っている者たちは特別驚くことじゃないと気にも止めずにいる。
下流、中流、上流と階級が別れている貴族の中の上流貴族……その中でもトップを争う権力を持つフランベルジュ家。
その一人娘であるエリカの元には彼女が幼い頃から家名を狙った男たちが近寄ってきた。
その見え見えの下心が嫌になり、彼女はいつしか周りを拒絶し、寄せ付けないようになった。
彼女が普通に話せるのは、歳が大きく離れた者や、彼女が興味を持った人間のみ。
彼女が同年代が多すぎるこの学園でこの態度をとるのは、既に分かりきったことだったのだ。
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