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そんな少年の頬を一筋の水滴が流れる。
それを境に壊れたダムのように溢れ出してきた。
たくさんの涙の流れのなかに大きな水滴がぽつぽつとあらわれる。
その水滴は首を伝い、鼻に伝い、何粒かは墓に落ちる。
もう、彼の顔は人に見せられないようなくらいひどい有様になっていた。
だが、ここには誰もいない。
周りの目を気にする必要もない。
少年の涙はぬぐうたびに溢れ、何度も目をこすったからか、もう彼の目は腫れ上がっている。
泣き終わってもこんな目を見られたら家族に心配されるだろう。
しかし、それは少年にとってはいらない心配だった。
少年の家族はもういない。
唯一の家族と言える最愛の人はもうこの墓の中で眠っている。
やがて少年は震える唇を噛みしめ、涙をこらえた。
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