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灰色の曇り空の下。
西洋風の建物が並ぶ迷路型の都市を赤髪の少年は歩いていた。
周りはまったく同じ造形をした色合いだけが違うコンクリートの家々が立ち並ぶ。
無駄な個性が一切なく、芸術など求めずに、家としての機能のみを追求した長方形。
見ていてこれほどつまらないものはないと言えそうな建造物だが、これが街全体を統一しているともなれば話は変わる。
街の中にいれば気づかないかもしれないが、街の上空や外から見た街の景色には心を動かすなにかがあった。
しかし、赤髪の少年はまるで興味を示さない。
街の中にいるから気づかないとかそういうのではなく、純粋に興味がないのだ。
結論から言えば、彼は人間嫌いだった。
人間も、人間が作った物も、もちろんこの街も少年は嫌いだった。
だが、少年は助けを求める人がいたら当たり前のことのように助ける。
もともとは少年は人間を愛していたが、愛しているから人間嫌いになったのだ。
自分から関わりを求めずに、助けを求められたら助けて終わり。
もしかしたら都合がいい人だと思っている人もいるかもしれない。
自分の使命のように人助けを行う毎日を過ごした少年の毎日は、本当につまらないものだった。
そんな環境で生きてきた彼が普通の感性を持ち続けられるわけがなかった。
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