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助かった。カルタはそう思い手を取ろうとして固まる。
差し伸べたと思った少女の手には似つかわしくない黒光するピストルが握られていた。
「冗談だろ?」
少女は何も答えない。
「やめてくれ」
少女はゆっくりと銃口を持ち上げ、僕の頭に狙いを定めた。
「あなたに価値はあります?」
僕は日本人だ。きっと価値がある。そう言葉にしようとしたが声がでなかった。
僕に価値は・・・・
少女が銃のスライドを引く。
「僕に・・・・・・・価値は・・無い」
そう僕には価値がない。ここに来るときには全てを捨てる決意をしてきたんだ。
夢を叶える為に強くしてくれると信じて。クロコが不思議な存在だからって都合よく強くしてくれるわけではなかった。
少女が満面の笑みを浮かべた。
この子は引き金を引く。カルタは直観的にそう感じた。強くなるどころか初日に死んでしまう事になるなんて。僕の人生は所詮こんなものかと。
カルタは昔見たテレビの映像を思い出した。ニュースで報道されていた紛争地帯の映像だ。日々繰り広げられる戦場に住む住民たち。子供は皆泣いていた。その映像が自分の状態と重なった。もちろん、その場に生きる人たちと苛められる僕を比べるなんておこがましいほど戦場の生活は悲惨なものだった。
そのせいもあり、カルタは客観的にニュースを考える事が出来た。
人間は弱いものを攻撃する。なぜ命まで奪う?
それはきっと必要な事だからだ。
攻撃する事で生まれる事はなんだ。
憎しみ、反発。怒り。
なぜそんなモノを欲する理由は何?
裏で動くお金?奪い取る土地?嫌違う。僕が苛められるのと同じように、人間が生まれてから戦いがなくならない根本の理由は?
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