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「あらがえ」
どこからか声が聞こえた気がした。
あらがう。カルタの脳裏に恐竜の図鑑が思い浮かんだ。生物は昔、隕石の衝突により絶滅しかけた。しかし生き残った僅かな生物はそこから爆発的な進化を遂げた。
「あらがえ」タクトは反芻する。
抗わない生物は弱い。生き残るために抗え。あらがう為には、強くさせるには何が必要だ。
・・・・・・・限りある命
足首に鎖が巻かれたかのように体も重く怖くなりその時はそれ以上先を考える事ができなかった。
カルタは何者かの気配を近くに感じた。
はっとカルタは目を見開いた。
少女が引き金を引こうとした瞬間、全てを理解した。
僕のこの命も生物の進化の為に必要な過程なのか。僕たち生物は生きるために死ぬんだ。
僕の命は無くなればそれで終わりとなるのに。生物としては生き残るように。あらがうようにと。
人間なんていうのは、概念でしかないはず。なのにそれを生かす為に…。
僕の足に纏わりついた鎖。それは人間という概念。輪廻だった。僕がもっとも忌み嫌っている。
「うわぁ“あああああぁーーーーーー」
カルタは声を上げた。
少女は笑顔のまま引き金を引いた。
カルタの頬から血が噴き出す。
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