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気付けば俺は、死に行く太陽が最期の命を燃やす、紅く爛れた光の中に立っていた。
頭を巡らすと、隣に友人が心配そうな顔で立っている。
頬が熱い。いや、痛い。
俺は頬を擦った。
「すまん、殴った。でもな、何回声を掛けても反応が無いし、どんどん歩いていくから不安になったんだ」
殴った?
いや、それよりも歩いていった? 何処に?
俺は自分の状況が分からず、友人が何を言っているのかも理解出来ないでいた。
友人から視線を外し、周囲に目をやる。
そこは自分の部屋ではなかった。
一本の草も生えていない、固く乾いた地面。養分は勿論、水分すら一切無いのだろう、所々がひび割れている。
そして目の前には、毎日見てきたあの家が建っていた。あの茶色くささくれたような壁も、トタン板を葺いた屋根も、寸分違わずそこにある。
唯一異なっているのはあの窓だ。
あの窓。いつも人影を映していた、あの窓。
鮮明に、人影を映していた、あの窓。
そこにはまるでタールのようなどす黒い汚れが広がり、夕陽が目隠しをしてなくても、中の様子など窺い知りようがないのだった。
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