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「……どうする? 入ってみるか?」
立て付けが悪いのか、玄関がゆらゆらと揺れ動いている。当然、鍵は掛かってないという事だ。それに気付いた友人が、呆然と家を見ている俺に声を掛けてきた。
しかし俺はそれに答える事が出来ず、固まったままでいた。あの人影の正体を掴みたいという気持ちもあるが、それよりも恐怖心の方が強いのだ。
此処に来たのは自分の意思ではない。そして、あのスマホに映った画像。
あの闇が脳裏にこびりついて離れない。
そんな俺に業を煮やしたのか、
「開けるぞ」
友人はそう言いながら、揺れ動く玄関のドアノブに手を掛けると、そこにあった隙間をゆっくりと大きくしていった。
俺の視線はその闇を孕む隙間に釘付けになる。
次第に大きくなる闇に、俺の恐怖も肥大していった。だがそれから目を逸らす事が出来ない。
友人の手によって大きく開かれた扉の内側の闇から、痛い程の視線を感じる。それも一つではない。
俺はそこに立ち尽くしていた。
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