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あの家の子供はいつも、あの窓から外を眺めていた。
当時のあのアパートのあの部屋の住人が、毎日のように寂しげな瞳で窓辺に立つ子供の姿を見ていたそうだ。
ある日突然、その姿が見えなくなる。
それを不審に思ったあの部屋の住人の通報により、あの家の惨劇が世間に知れる事となった。
一家心中。
何故そうなったのか、経緯は全く分からない。恐らく多額の借金ではないか、という話だ。
あの部屋の住人は居たたまれなかったのだろう。その後すぐに、部屋を引き払ってしまった。
その住人の後からあの部屋を借りた人達は、一様に姿を消してしまっていた。その人達は、今も見付かっていない。
今後も見付かる事はないだろう。
それなのに俺は、未だに姿を消す事なく、まだあの部屋に住んでいる。
そして夕方になると窓辺に立ち、あの家のあの窓を見るのだ。
そしてあの人影を。
時折、友人の顔になる、あの人影を。
スマホの画面に大きく映る友人のその眼には、何の感情も浮かんでないように見える。しかしきっと俺を恨んでいるのだろう。
あの時、友人を飲み込んだ家は、俺の目の前でその玄関の扉を閉じてしまった。その後、何度もあの家を訪れたが、あの時は開いていた玄関は、俺を拒否するかのように固く閉ざされたままなのだ。
だから俺は、友人が俺を呼ぶまで、ずっとこの部屋のこの窓から、あの家のあの窓を見ている。
そう、ずっと……。
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