7/13
前へ
/13ページ
次へ
「どの家がそうなんだ?」 友人の声に、俺は驚いて振り向いた。部屋に戻り、窓を開けた直後で、友人の事は忘れ去っていたのだ。 「あ、あぁ、あそこの茶色い壁の一階建ての家だ」 「あの家ねぇ……。でも西陽の反射がスゴくて、俺は何も見えねぇぞ? 本当に人が立ってんのか?」 友人が俺の横から窓の外に身を乗り出し、目を細めながら聞いてくる。 「立ってる!」 俺は強く答えたが、実際は不安を感じていた。友人の言うように、その窓はオレンジ色を映すのみで、中の様子など窺えそうもない。 でも。 今日は天気が良いからで、曇りの日も雨の日も、あの人影があった事を確認したのだ。だから、今日もそこにいる筈だ。 まるで自分に言い聞かせるかのように、そう思い返してみても、戸惑いは隠せないでいた。すると友人が、 「まぁ、それでもお前の様子がおかしいのは確かだもんな。どうする? 俺、泊まろうか?」 そう聞いてくる。 「そ……だな」 友人が泊まったからといって、何か変わる訳でもないだろうが、泊まって貰った方が良いような気がしているのも事実だった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加