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「どの家がそうなんだ?」
友人の声に、俺は驚いて振り向いた。部屋に戻り、窓を開けた直後で、友人の事は忘れ去っていたのだ。
「あ、あぁ、あそこの茶色い壁の一階建ての家だ」
「あの家ねぇ……。でも西陽の反射がスゴくて、俺は何も見えねぇぞ? 本当に人が立ってんのか?」
友人が俺の横から窓の外に身を乗り出し、目を細めながら聞いてくる。
「立ってる!」
俺は強く答えたが、実際は不安を感じていた。友人の言うように、その窓はオレンジ色を映すのみで、中の様子など窺えそうもない。
でも。
今日は天気が良いからで、曇りの日も雨の日も、あの人影があった事を確認したのだ。だから、今日もそこにいる筈だ。
まるで自分に言い聞かせるかのように、そう思い返してみても、戸惑いは隠せないでいた。すると友人が、
「まぁ、それでもお前の様子がおかしいのは確かだもんな。どうする? 俺、泊まろうか?」
そう聞いてくる。
「そ……だな」
友人が泊まったからといって、何か変わる訳でもないだろうが、泊まって貰った方が良いような気がしているのも事実だった。
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