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力の入らない足を引き摺り、鞄に入れっぱなしのスマホを手にすると、また窓に戻る。しかしそこで、スマホをずっと充電していない事を思い出した。にも関わらず、あの家に向けるスマホのバッテリーは、フルに近い状態になっていた。 俺の指は震え、脳はスマホの画面を見るなと指令を出している。しかしその指令が俺の身体に伝わる事はなく、勝手に指は画面を拡大していった。 俺の指の動きに合わせ、スマホの画面は拡大され、それに従いあの家が拡大される。 画面はあの家のあの窓を拡大し、更にあの人影を拡大し、そして……。 そこにあったのは闇だ。 水底にあるかのような淀んだ、深い深い闇。それが無数に絡まり合い、俺を見ている。 そして渦巻く黒い感情。 俺はそれに引き摺り込まれる。 俺の視界を形作る様々な色は消え去り、俺の世界はその闇一色に染まっていった。 「おい! ちょっと待てよ!!」 友人の声が聞こえる。何を待てと言ってるのだろう。 「待てって!」 俺は何処にも行ってない。感覚の無い暗闇の中で、ただじっとしている。 そこに突然、熱が加わった。同時に軽い衝撃を感じる。その途端に俺は、まるで吸い寄せられるかのように急激に、闇から浮上していった。
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