プロローグ

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      「けっこー、おっきーなぁ…」 校庭や近くの歩道を彩る様々な木々の葉。紅葉と呼べるそれらは、秋を全面的に表現していた。 数えるのも面倒になるくらいに沢山植えられた木々の間を小走りで通り抜け、下見に来た時と変わらない昇降口に行って教えられた一番端の列の一番下から二番目に買ったばかりの学校指定のローファーをしまった。 そして、お気に入りのリュックに入れて置いた新品の上履きを落とすように床に置いて足を入れた。 「………よし!」 静かな廊下に響いた自分の大きな声に少しだけ驚いた。思っていた以上に声出ちゃった…。 もう朝のSHR始まってる時間だから、静かにしないと…。 「あれ?ここかな…?」 突き当たりにあった階段を登り、職員室を探す。 この辺だった気がするけど… 「!」 小さな窓から、先生が中を行き来するのが見えた。 何処の学校も職員室の雰囲気って似てるんだな…。 扉を二回だけ手で叩いてから中に入った。 「失礼します、薮せんせ…」 「お、こっちこっち!」 「薮せんせっ」 椅子の背凭れに寄り掛かり手を振る先生。 一際目立つ。それは、先生の綺麗な顔立ちが理由の一つなのは勿論の事他にも明るい色の髪やスラッとした腕や少し着崩したスーツのせいでもあった。 初めて会った時は、こんなチャラチャラした人が担任の先生だなんて嘘だと思ったけど。予想通り生徒にも人気で信頼も厚いらしいし、少し安心した。 何より接しやすいし。 「おい初日から遅刻かぁ?いい身分だなぁ」 先生の隣に座ると、俺の前髪をクシャクシャにした。 結構頑張ってセットした髪型なのに… 「じゃ、行くかっ」 「…はい」 とは思ったけど、声にはしなかった。 先生のフニャリとした笑顔があまりにも可愛かったから。 「男子校は共学に比べて煩いだろ?」 廊下を歩きながら先生は笑って話す。 確かに廊下にも少し騒ぐ声がそれぞれの教室から聞こえてくる。 「いや、俺のがっこー女子がわりと多かったからある意味煩かったんですよ」 「女子の煩さと男子の煩さは違うだろ?まぁ、その内慣れるか」 「ですね」 へへっと小さく笑った先生に俺も笑顔を返した。 別に笑おうと思って意識的に笑った訳ではない。ただ、なんとなく口角が上がっただけだ。  
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