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あまり目立つ様な事さえしなければ、平和に過ごせそうだ。
まぁ、こんな微妙な時期に編入なんて完璧目つけられる対象だと我ながら思うけど。その辺は親の転勤とか適当に誤魔化せば納得してもらえるだろう。
どうせみんな、俺なんかに興味無いだろうし。
ふと、何気無く右隣を盗み見た。
左側にはベランダへと続く窓しか無い事を知っていたから。
「っ!」
多分、時間にすると一秒あったか無かったかくらい。なのに、解ってしまった。
それだけの短い時間しか視界に入れなかったのに、俺の脳内は一瞬にして真っ白になった。
少し長い黒髪。銀縁のメガネ。つまらなそうに先生を見る横顔…。
一瞬で入って来た情報全てが、俺の第六感と言う名の何かを激しく突いたから。
もう一度見たい。その気持ちと裏腹に目が合ったら気まずくて耐えきれないと理性が葛藤し、自然に俯く。
横顔だけで解った。
俺の隣に座る彼は、驚く程に綺麗に整った顔立ちをしていた。
「じゃあSHR終わりー」
チャイムが鳴ると、先生はダラダラと挨拶もしないで教室を出て行ってしまった。
こんなんでよく成り立ってるな…。
「ねぇねぇ!」
ボヤッと先生の出て行った扉を見つめていると、SHRが終わるのを待っていたかの様にクラスの半分くらいの人が俺を囲んだ。
当たり前…って言ったら当たり前か。SHRでやけに静かなクラスだと思ったけど、まさかみんながみんなシカトする訳無い。
囲まれた事に、戸惑いと嬉しさを隠せなかった。
「………」
俺に向かって投げられる質問に答えつつ、周りを見る。
俺を囲む奴らは、やっぱり何処か派手な感じがした。それと同様、遠くから俺を見ている殆どの奴らは逆に何かアニメやアイドルに熱中しているかの様。
別に偏見は無いけど、あまり親しくもなれなさそうだ。
時折混ぜてくる冗談に笑いながらクラスの奴らと話していると、あっという間に時間は過ぎ一時間目開始を意味するチャイムが鳴った。
俺の周りに居た奴らは、笑顔を残してそれぞれ席に戻った。
なんだ、なんだ。心配なさそう。みんな、思ってたよりいい奴ら。
「ふふっ」
小さく笑いを溢して、一時間目の生物の教科書を出した。一時間目が生物だって事は前々から知っていた。そして二時間目は数学だ。
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