プロローグ

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      「………」 おじいちゃん先生が授業を進めて段々と時間が過ぎる。 その過程の中で気付いた事。 まず、このクラスは前に居たクラスよりも明るい人が多い。授業妨害とまではいかないけど黙って黙々と授業に取り組んでいる様子の人が少ない。数人居るけど。 例えば俺の前の席の奴とか。普通、前の席の人が積極的に話し掛けて来てくれるもんじゃないのか?それって夢みすぎ?ただでさえ一番後ろの窓際の席なのに。それに。 「………」 チラリと隣を盗み見る。 相変わらずそこには安定したイケメン。イケメンなのはいいけど、見た目からして無口そうだ。無口ならまだしも簡単に笑ってさえくれそうにもない。話した事なんて今日初めてだから当たり前に無いけど、そういう人ってすぐ雰囲気で解ってしまう。前の席の人もそうだ。 こうなると俺が友だちと呼べる人をつくるには休み時間という短い時間だけになる。せめて隣と前の席の人とは授業中に友だちになっておきたかったのに。計画丸つぶれ。 「はぁ」 短い溜め息をつき、教科書に目を落とす。 一度教わってしまった事をもう一度教わるなんてなんて貴重な体験をしているのだろう。しかも違う教師に。前の学校の生物担当の教師は若い女だった。まるで正反対だ。 新鮮さを失った中身の無い先生の話を聞き流す。 授業は無条件で憂鬱だ。学校がかわっても好きにはなれない。 「…ねぇ」 暇を持て余し、利き手に握っていたペンをクルクルと回す。回す。 あいている方の手は頬杖をついて、ひたすらそれに集中して回す。回す。 カチカチと中で芯が動く音がする。きっと俺しか聞こえない。いや。もしかしたら前の席の奴にも聞こえてるかも。もしかしたら隣のイケメンにも。 指が疲れて来た。でも、止めるタイミングが今一解らない。動かす指を意図的にとめればいいだけなんだろうけど、何故かそう出来ない。指からペンが落ちるのを待つしか無い。早くおちろ。でも床におちるのは勘弁してくれ。でも、おちろ。 「聞こえてんの?」  
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