プロローグ

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      「…首」 「…くび?」 一瞬、彼の言った言葉と俺の考えが一致せずおうむ返し。 首を傾げると、彼は少しだけ顎を引いた。 「次の数学の授業。次は自習だけど、先生が居る時は目立つアクセサリー外した方がいいよ。数学担当の先生、すぐに没収するから」 「そうなんだ」 いい事聞いた。覚えておこう。わざわざ教えてくれるなんて優しい…。 染々と感じながらしていたネックレスを軽く撫でる。何気無く腕時計を見ると、この時間は後数分で終わりそうだった。思っていた以上に早く感じる。前の席の奴を睨んでいた時間がそれだけ長かったということだ。 「ありがとう」 今度ははっきりと言えた。 ペンを拾ってもらった時に言ったのよりはっきりと。自己満足の世界だ。 そしてこれも自惚れかもしれないが、彼の口角が少しだけ上がった気がした。また自己満足かもしれないけど。 彼が笑ったと思えた。だからそういう事にしておこう。思うだけなら自由な筈だから。 拾ってもらったペンを親指と人指し指で軽く摘まんだ。簡単に持ち上がった。そのまま手を動かしてペンをペンケースに戻した。もうおとさない。自分にきかせるように。きっともう、床に落とす事は無いだろう。 「………」 傷をカバーしているものを見て。不思議に思うのは当たり前。 でも、それを綺麗だと思うのはどうなんだろう。異常だと表現されてしまうのかな?それともミステリアスな感じにとらえてこれもまた当たり前だと思われるのかな。でも、自分で思うのも変だけど綺麗と思うのは少し、いやかなりだ。かなり人並み外れている。気がする。いや外れている。絶対に。 じゃあ俺はなんで彼の右頬を見て、左側だけの顔を見た時とは違うものを感じたんだ?驚き?…違う。違う。何か違う。大きく違う。俺は綺麗と感じた訳ではなかった?じゃあ彼の傷を見て何を感じたんだ? 「っ!」 そうだ。 よくじょうしたんだ。  
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