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珍しい動物を見たのは、植物にそれらしい名前をつける作業に一区切りをつけて、帰り道の草原を歩いていたところだった。
時計を持った白い兎が走っていったのである。
そもそも、兎自体を魔界で見かけないので、私は追いかけてみることにした。
発想を撤回。近くの植物で行き止まりの壁をつくってあっさり追い込むことに成功。白い兎は戸惑っていた。
「はじめまして兎さん、こんなところで何をしているの?」
「ああ、やっと声をかけてもらった、ぼくはいそいで女王様のもとにいかないとなんだ」
「そうなの。ねぇ、兎さん、兎鍋にされる時間はあるかしら」
恐怖を与えないようにしゃがんで問いかけてみたが、何故か彼は青ざめ、
「きゃー!!」
悲鳴をあげて私の横をすり抜け、逃げていった。
「あっ、お待ち!」
立ち上がってそう言ってみたものの、ただでさえ小さい後ろ姿が、さらに小さくなっていてあきらかに追い付けない。
「小動物の肉、滅多に手に入らないのに……」
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